
江戸時代中期に観相学の大家と言われる水野南北という人がいました。
この人は元々は酒代ほしさに押し込み強盗をしでかし、牢屋に入れられたこともある人です。そして出所後、大阪で有名だった易者に観てもらったそうです。
そうしたら、なんと「剣難の相が出ている、あと一年生きられないであろう」と言われてしまいます。生きながらえるためには、出家するしか道はないとも言われてしまいます。なんとか助かりたいと考えた水野南北は禅寺へ出家志願をします。
ですが水野南北の悪相を見たお坊さんは、弟子にするのをためらい、「一年間、麦と大豆だけで過ごせたら入門を許可する」と言って一度出家を断ります。
必死の水野南北は、その言葉通りに一年間、麦と大豆だけで過ごします。そして一年後、再びあの易者のところに行き観てもらいました。
すると、水野南北を観た易者はびっくりして言いました。
「剣難の相が消えている!」
そして問います。
「何か大きな徳積みをしなかったか?」
水野南北は答えます。
「特に何もしなかったが、一年間麦と大豆だけで過ごしました。」
それを聞いた易者は言います。
「食を節制するということは天に対して陰徳を積むことである。麦と大豆だけで過ごすことにより、知らず知らずのうちに天禄が書き換えられ、剣難の相がすっかり消えてしまったのだ。」
もう出家する必要が無くなった水野南北は、自分も観相家になろうと思い立ちます。そして、様々な職業を経験し人間観察を行い、ついに南北相法という観相術を確立するのです。
さらに、ついには人生の奥義たる、「食は命なり」という真実に辿り着きます。
水野南北は大食、美食を繰り返す者は、たとえ良運、吉相に恵まれていても運勢を悪くすると言います。
それとは逆に、たとえ凶運、悪相の者でも、質素な食生活をしている者は良運に恵まれ、必ずや大成すると言います。
また鑑定においては、その人の食生活を聞き占断を下し外れる事が無かったという。
「食は命なり」
食生活のあり方が運命を左右する。
飽食過食の現代人は、特に肝に銘じるべき格言である。
いったいどれだけの現代人が、自ら運勢を傾けているのであろうか。
食は命の元である。
食を粗末にする者は、自らの運命を卑しめる者である。
食生活というのは、生きることそのものであると言っても過言ではない。
あなたは、どのような生き方をしているのであろうか。
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